冷凍カニ

冷凍カニの解凍法

2016/12/04

生の冷凍カニを室内に放置して解凍してはいけません。なぜでしょうか。

魚介類の内臓や筋肉には、自分自身を分解してしまう酵素と言う物質が含まれています。肉はタンパク質でできていますが、酵素も実はタンパク質の一種です。タンパク質はアミノ酸が複雑に繋がった構造を有しておりますから、カニ肉も、その中の酵素もアミノ酸から出来ています。

カニ肉には芳香族網アミノ酸の一種である、チロシンというアミノ酸が含まれています。可食部100グラムあたりの含有量は、生の毛ガニでは480ミリグラム、生のズワイガニでは430ミリグラムです。チロシンの持つ困った特性として生のカニ肉に含まれる酵素であるチロシナーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ)の働きにより、カニ肉を黒く変色させてしまうという問題があります。黒色の素は人間の日焼けした肌を黒くする物質と同じ、メラニンです。

メラニンの生成メカ二ズムは完全に解明されているわけではありませんが、酵素が働く前に加熱して破壊してしてしまうか、低温にして酵素の働きを抑えるか、酸素による反応活性化を抑えるために密閉包装したり酸化防止剤を使用する、といった対策が考えられます。酸化防止剤としては、ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が知られております。なお、食品衛生法の規定で酸化防止剤を使用した場合はその表示が義務付けられています。

生の冷凍カニを暖かい室内で解凍した場合、どのようなことが起こるでしょうか。
内部はまだ凍っているのに、カニの表面側だけが溶けてチシロナーゼが活発に活動を始め、表面にメラニンを生成して黒っぽいカニ肉になってしまいます。冷蔵庫内で時間をかけて解凍した場合は、溶けたカニの表面の温度は5度以下ですから、チシロナーゼの活動はゆるやかとなり、黒っぽくなる可能性が格段に下がります。下図は、冷凍カニの解凍に失敗した例です。室内に適当に放置したため水浸しで、しかも一部のカニが真っ黒になっています。

黒くなったカニ

活きているカニなのに、わざわざ朝茹でしてから冷蔵便で送ってくれるカニ通販店の意図としては、プロが茹でたほうが美味しいという理由もありますが(絶妙な塩分で茹でてくれるから美味しい。素人が茹ですぎると身がパサパサになってまずくなる)、かさ張るカニを一般家庭で取り扱う場合、新鮮なカニなのに、温度管理が不適切でカニを黒変させてしまう可能性があるからなのです。
むき身のカニは殻が取れている分、酸素に触れる面積が大きいです。このため、室温で解凍して放置すると、どんどん表面の色が黒っぽくなります。皮肉なことに良心的な店ほど、酸化防止剤の使用量を抑えたり、そもそも使用しないため、扱いを間違えると黒くなってしまうという悲劇が起こりうるわけですね。このような理由から「冷凍生カニは冷蔵庫で解凍してください」とか「袋に入れたまま流水に漬けて、少し凍った状態までの解凍で十分」と言われているのです。
余談ですが、酵素によって自分自身を分解してしまうことを自己消化といいます。上述の生のカニ肉が黒く変色するような困った自己消化だけでなく、イカの塩辛のや、魚醤(タイの「ナンプラー」や、東北地方の「しょっつる」)のような、魚介類の自己消化が人間にとって嬉しい使い方をされる場合もあります(熟成されて美味しくなる)。

ズワイガニの冷凍ポーションのレポートはこちら
カニ刺用の生冷凍ズワイガニのレポートはこちら



-冷凍カニ