冷凍カニ

カニの急速冷凍の種類とは

2016/10/28

最近の食品冷凍技術の進歩は目覚しいものがあります。緩慢冷凍ではカニの細胞を壊すような大きな氷の結晶ができてしまいますが、最大氷結晶生成帯を短時間で抜けられるような高性能な業務用冷凍装置で急速冷凍をすれば、カニの細胞の中の氷の結晶が小さくなって細胞が壊されないので品質劣化は軽微になります。最近ではカニを獲った船の上でそのまま急速冷凍するか、あるいは港に隣接した工場で急速冷凍されていますから、カニの品質の劣化は最低限まで抑えられていると言ってよいでしょう。

急速冷凍技術には主に3つの方法があります。一つ目は-40℃以下の空気を冷凍庫内で強制対流させるなどの方法で冷凍対象物に冷気を吹き付けて急速冷凍する方法(エアブラスト冷凍)、二つ目は超低温の液体(例えば冷却した飽和食塩水など)に漬け込んで急速冷凍する方法(ブライン冷凍)、三つ目は液体窒素(温度は-196℃)または液化炭酸ガス(-76℃)を吹き付けて急速冷凍する方法(液化ガス冷凍)です。カニの冷凍に関してはエアブラスト凍結と、飽和食塩水を用いたブライン凍結が広く適用されておりますが、近年では-196℃の液体窒素を用いた液化ガス冷凍技術が適用されているケースもあるようです。

エアブラスト冷凍においては、カニは空気または窒素などの不活性ガスにしか晒されませんので、冷凍対象物であるカニの味に与える影響は少ないわけですがブライン冷凍よりも冷凍時間がやや長いためカニの味に与える影響が無いとは言えません。一方、飽和食塩水を用いたブライン凍結では、食塩を用いるわけですから「しょっぱくなる」という問題が起こることがあります。

ブライン冷凍に使用する液体をブラインといいます。コスト上や保守管理上の理由からカニの急速冷凍においては飽和食塩水が広く用いられています。飽和食塩水とは水に食塩を限界まで溶かしたものであり自分で作ることもできます。水は0℃で氷になるわけですが、食塩などの溶質を溶かした水はモル凝固点効果という現象により0℃でも凍りません。このため水に食塩を溶かして冷やしただけなのに-20℃の液体を作ることができるのです。冷やした食塩水にカニを一気に漬け込むことでカニが急速に冷凍されるというわけです。飽和食塩水を使うとしょっぱくなるわけだからエチルアルコールなどの無害かつ揮発性の高いブラインを用いることで味に対する影響を抑えることも考えられますが、コストや保守管理上の理由からカニ冷凍には適用されていないと考えられます。

冷凍たらばがに、冷凍ずわいがにの大半は輸入品です。ロシア産の冷凍かにはブライン冷凍品が多く、アメリカ産の冷凍かにはエアブラスト冷凍品が多いという話もありますが、必ずしもエアブラスト冷凍であるとは限りません。冷凍方法がエアブラストと明記されているものが選択できるのであれば、それを選んだほうが塩抜きの手間がかからない点では良いと思います。ただし、最も一般的な冷凍カニは飽和食塩水を用いたブライン冷凍品であり、しょっぱい場合であっても塩抜きをすることで十分美味しく頂くことができますので、過度な心配は必要ありません。

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以上をまとめますと、カニの専門業者が冷凍したカニは急速冷凍品であるため美味しいけれども、余ったカニをご家庭のふつうの冷凍庫で再冷凍すると、まずくなります。冷凍カニを買ったら食べる分だけ解凍しましょう!



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