食べ終わったカニの処分

カニを食べ終わったら新聞紙に包んで密封しよう

2016/10/28

お店でカニを食べる場合には片付けはお店の仕事ですから、カニ殻の処分のことなど考える必要はありません。しかしご家庭でカニ料理を楽しんだ後は、カニの生ゴミの処分が意外に大きな問題となります。

カニの生ゴミは予想を上回るほど臭いが強く、殻がゴミ袋を突き破って臭い汁がたら~り、ということがあるからです。こうした問題を少しでも軽減するための方法を考えてみましょう。

★ポーションのような殻の少ないカニを買う

一般家庭ではこれが王道です。カニ通販会社では、カニを半分むき身状態にした冷凍たらばがに、冷凍ずわいがに等を提供しています。ポーションとか、ビロードカットとか呼ばれています。

食べれる部分がたくさんあり、食後にゴミとなる殻の部分が少ないわけです。家族や仲間でガッツリ食べるなら、殻の一部をあらかじめ取り除いたものを購入するのが良いと思います。もちろん殻が少ないとは言ってもカニしゃぶを楽しめるように一部の殻は残されていますよ。準備と片付けが楽でたくさん食べれるので総合的に言ってカニのポーションが最高だと思います。写真はズワイガニ生冷凍のポーションと、あらかじめ殻を取ってある生冷凍のズワイガニのツメです。解凍して鍋に放り込むだけで食べれます。

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 ★完全に殻の取り除かれたカニを買う

これは一番ラクチンなのは良いのですが、手づかみで食べるのはカニの楽しみだったりするわけです。これはお好みでどうぞというのが私の考えです。カニチャーハンやカニサラダの場合は完全なむき身を利用するとラクチンなのは間違いありません。完全に殻が取り除かれて流通しているカニの多くはベニズワイガニですが、ときどき、タラバガニの完全なむき身が販売されていることもあります。

 

★食べ終わった後に一工夫する

魚やカニなどの動物性の生ゴミが臭い理由は、動物性の生ゴミに含まれるアミノ酸が微生物に分解されて臭いガスを放出するためです(イモが腐ってもこんなに臭いません)。ならば生ゴミが分解されない対策を施せば良いことになります。冷凍食品がなかなか腐らない(微生物に分解されない)のは冷凍すれば微生物の働きが弱まるからですが、まったく同じように、食べ終わったカニの生ゴミは冷凍してしまえば微生物の働きが弱まってなかなか腐りません。

しかし生ゴミを冷凍するのはちょっと嫌ですよねえ。殻でゴミ袋を破らないように古新聞などでゴミを包んでゴミ袋に入れて縛っておき臭いが漏れないようにしておくのが一番簡単だと思います。

重曹(炭酸水素ナトリウム)またはレモン汁をかければ良いというご意見もありますが、くさったカニの臭い成分は酸性で分解される成分(アンモニア)とアルカリ性で分解される成分(メチルメルカプタンなど)が混在していますので臭いを完全に消すことは原理的に不可能です。重曹とレモン汁を両方かけたら中和してしまうので効果はありません。

やはり古新聞で包んでからゴミ袋に入れて密封するのが簡単かつ最強な対策だと思います。もちろん、大きな冷凍庫を所有されている方は冷凍しておきゴミの日まで保存するという方法でもかまいませんが、捨てるのを忘れてしまうと悲惨ですね。

 

カニの生ゴミが特別に臭いのはなぜか?という話をもう少し詳しく掘り下げてみましょう。食物に含まれるアミノ酸が微生物に分解されると(腐ると)、臭いガスを発生します。アミノ酸は必ず窒素(N)原子と水素(H)原子を含みますので、様々な微生物で分解されたあとは臭気の鋭いアンモニア(NH3)ガスを生成します。一方、アミノ酸の中には含硫アミノ酸や芳香族アミノ酸と呼ばれる種類があります。前者は分子構造の中に硫黄(S)を含み、後者はベンゼン環と呼ばれる複雑な構造を含んでいます。含硫アミノ酸のうちメチオニンとシスチンの含有量を毛ガニとじゃがいもで比較してみると、毛ガニでは530ミリグラム、じゃがいもでは48ミリグラムであり、ジャガイモより約10倍多く含まれていることがわかります。また芳香族アミノ酸のうちフェニルアラニンとチロシンの含有量を比較してみると、毛ガニでは1000ミリグラム、じゃがいもでは110ミリグラムであり、こちらも約10倍多く含まれていることがわかります。なお含有量は可食部100グラムあたりです。詳細データは文部科学省の食品成分データベースに詳しく載っておりますので興味あるかたはご覧下さい。

含硫アミノ酸が微生物で分解されると硫化水素(H2S)やメチルメルカプタン(CH3SH)が発生します。硫化水素は火山の火口付近に行くと感じる卵が腐ったような強烈な臭いです。メチルメルカプタンは悪臭防止法で規定されるほどのガスであり腐ったキャベツのような臭いです。人間の鼻の感覚ではアンモニアの500倍ほど強く感じられる不快な臭いです。一方、芳香族アミノ酸が微生物に分解されるとインドールやスカトールといった成分のガスが生成されこれらも非常に不快な臭気を有しています。こうした臭気の元となるアミノ酸が、じゃがいもの10倍含まれているためにカニ肉の腐敗臭が強烈になるわけです。

そのうえ、カニ肉にはトリメチルアミンオキシドという成分が含まれており、これが微生物に分解されるとトリメチルアミンという臭いガスを発生します。このガスも悪臭防止法で規定されるほど強烈な臭気を有しております。

もう一つ見逃せないのが、カニの生ゴミは殻が多い、ということです。これは空気が流れる隙間がたくさんあるということですから、発生した臭いガスがすぐに外部に流れ出てくるということです。

 

<まとめ>
・カニ肉は、含硫アミノ酸や芳香族アミノ酸を多く含む
・これらのアミノ酸が微生物に分解されると硫化水素、メチルメルカプタン、インドール、スカトールといった強烈な臭いを発するガスを発生する
・さらにカニ肉にはトリメチルアミンオキシドという成分が元々多く含まれており、これが微生物に分解されるとトリメチルアミンという強烈な臭いを発するガスを発生する
・カニの生ゴミは殻が多く隙間が多いので空気が流れやすく、臭いが外部に放出されやすい
・以上の理由により、カニの生ゴミは超強烈な臭気を発生する

対策は前半に記載したとおり、
・ゴミ量を減らすためポーションなどの殻が少ないカニを購入する
・食べ終わったらすぐに新聞紙に包んでゴミ袋に入れて密閉する
です。

え?食欲落ちた? スイマセンw





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